受験「幼少期から、子どもの明日を子どもに問う」
幼少期からのできることの工夫に「語りかけ」があります。「語りかけ」とは単なる「おしゃべり」ではなく、子ども自身も気づかない心の底にうごめいているものを、一緒に手探りしてゆくことです。問題の意識化は、幼いころからの繰り返しによる「語りかけのトレーニング」によってしか発達しえないように思います。幼少であっても、子どもは自分に語りかけられる雰囲気のなかから、ものごとを的確に受け取ることをしています。それには大人の方がまず、そのままの自分を開いてゆくことです。
例をあげてみます。
昨日幼稚園の面談でお聞きしたの。
先生が絵本の読み聞かせをしているとき、あなたが突然大きな声で歌をうたいだしたり、お道具箱をひっくりかえしたりすることがあるって聞いたの。
どう?そういうことあったの?
それで夕べ、お父さんと考えてみたの。
小学校の受験をすることにしてから、ああしなさい、こうしなさいってお小言ばかりが多くなっていたことに気づいたの。
たぶんあなたは、「ぼくのお話きいてもらっていない」って思っていたんじゃないのかなって。受験をすることを決めた時も、まだ小さいあなたには分からないからと思ってしまったの。あなたにもっと相談するべきだったことに気づいたの。お父さんとお母さんは、A小学校はあなたに合うのではないかと思ったのだけれど。
あなたが「受けたい」と思っているかどうかを、あなたと一緒に考えてみようと思っているよ。ちゃんとあなたの気持ちを聞いてやらなくてごめんね。つらかったね。
彼は泣いているところを見せまいとして、終始うつむいていたそうですが、しゃくり上げながら何度も頷いていたそうです。
このような「語りかけ」の繰り返しで、漠然としたなかで、ただつらい思いをしているだけ、困っているだけのお子さんにも、自分の感じている気持ちがみえてきます。それが、お子さんが「自分を生きる道の始まり」になります。
「語りかけ」が、ご本人やご家族のよりよい成長や変容へのいざないになってくれますようにと思います。